作品概要
《舟遊びをする人々の昼食》は、画家のピエール=オーギュスト・ルノワールによって制作された作品。制作年は1876年から1876年で、フィリップス・コレクション(ワシントンD.C.)に所蔵されている。

舞台
本作は、パリ郊外セーヌ河畔の行楽地ラ・グルヌイエールにあるイル・ド・シャトゥー(シャトウ一島)にある、アルフォンス・フルネーズ氏が経営レストラン「フルネーズ」の、川面を見下ろすテラスが舞台となっている。
舟遊びに来た友人たちがテーブルを囲んでいる牧歌的な情景を描いているが、主題や全体の雰囲気などは、5年前に描かれたルノワールの最も世に知られる印象主義時代の傑作《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》と類似しており、絵のサイズもほぼ同一である。
しかしながら、本作では個々の人物描写へと注力され、レストランのテラスを背景とする集団肖像画の様を呈している。「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」と同様に、身近な友人がモデルとなっている。
登場人物
この絵では、フランスのシャトーに流れるセーヌ川沿い、メゾン・フォルネーズのバルコニーでくつろぐルノワールの友人たちが、静物、風景と一緒くたになって描かれている。
左手前には、後にピエールの妻となるアリーヌ・シャリゴが前面で子犬と戯れ、背後にはレストランの店主の息子アルフォンスJrが手すりに寄りかかり、銀行家兼批評家のシャルル・エフリュッシと言葉を交わす。
画面右側手前には、画家ギュスターヴ・カイユボットが椅子に座りながら女優エレン・アンドレと談笑している。テーブルの上には果物とワインが配置されている。
構図
対角線を描く手すりが、構図上人々を半分に分ける助けとなっている。片方は人物像で満たされているが、もう片方はもぬけの殻である。メゾンの所有者の娘ルイズ・アルフォンジヌ・ファルネーズとその兄アルフォンス・ファルネーズ・ジュニアがこの対比を際立たせる。
この絵画でルノワールは無数の光を捉えることに成功した。バルコニーに大きく開いた開口部分から入る光が主な焦点となり、大柄な袖なしシャツの男性が小屋の中でその光のそばに立つ。前面にいる袖なしシャツの男性ふたりとテーブルクロスがこの光を反射させ、構図全体に影響を与えている。
評価
1882年に、第7回印象派展に出品された本作は、一方で印象主義時代との決別を告げた作品でもあり、自身の重大な転換期における集大成的な最後の作品としても特に重要視されている。同印象派展では、3人の批評家が当会の最優秀絵画だという評価を下した。
絵画ディーラーでパトロンでもあったポール・デュラン・ルールがこの絵を買い、その息子からダンカン・フィリップスが1923年に次の買主となった。現在はワシントンDCのフィリップス・コレクションがその所蔵者である。豊かな様式美と流れるようなブラシ捌き、煌く光が特徴的である。
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