作品概要
《岩窟の聖母》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1483年から1486年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

1483年頃、サン・フランチェスコ・グランデ教会の司教バルトロメオ・スコルリオーネと無原罪の御宿り信心会がダヴィンチを含めた3名の画家に教会の祭壇画を発注した。
この時の納期は8ヶ月後であり、ダヴィンチたちは制作に追われることとなった。ところがダヴィンチ側と発注者の教会側との間で金銭トラブルが発生し、紆余曲折の元、この絵が礼拝堂に納品されたのは1508年となった。
当作品においては構図が全く同じものが2点存在しており、パリのルーヴル美術館所蔵とイギリスのナショナル・ギャラリーにそれぞれ所蔵されている。ルーヴルバージョンは先に描かれたもので、ロンドンのものよりも大きい。
ダヴィンチはこの作品を描きあげ別人に売り払った後、ロンドンの作品を描いたとされている。ルーヴルバージョンでは彼が考案したぼかし技法であるスマーフ法が使われている。なぜ同じ構図のものを2点描いたのかは未だ不明である。
ロンドンバージョンのものは1781年頃に教会に売りに出され、様々な人の手を渡った後1880年にナショナル・・ギャラリーに所蔵されることになった。
モチーフとなっているのは幼児イエスキリストの元に聖ヨハネが礼拝に訪れるという場面で聖書にはないものである。
両作品の一番大きな違いは右端に描かれている天使の表情と右手の描写である。ロンドンバージョンについては他の画家が何らかの形で描き足したのではないかという説もある。
作品の構成
中央の女性が聖母マリア、右側の女性が天使、そして2人の幼児はおそらく左側が洗礼を受けるイエス、右側が洗礼を与えるヨハネだといわれている。
天使の指はイエスを指しており、ヨハネに「あちらがイエスです」と、伝えている。
ルネサンス期の宗教画は、複数のエピソードを組み入れる画面構成がしばしば見られるが、この絵画も受胎告知と後誕、受洗の3つのエピソードを同時に表しているとされている。
来歴
個人蔵のものは、2002年にスイスの個人コレクションで見つかる。ルーヴル美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリーにもほとんど同じ図柄の「岩窟の聖母」があるが、ダヴィンチ研究の世界的権威者カルロ・ペドレッティによると、その二つの絵が描かれた間(1494?1497)に、ダヴィンチとその弟子たちによって描かれたとされているのが本作。
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