作品概要
《ベアトリーチェ・チェンチの肖像》は、画家のグイド・レーニによって制作された作品。制作年は1600?年から1600?年で、ローマ国立絵画館に所蔵されている。

幼くして父親殺しの罪に問われた貴族の娘ベアトリーチェ・チェンチの処刑直前の姿を、監獄の中でイタリアの画家グイド・レーニがとらえた作品である。暴力的でふしだらな父親フランチェスコ・チェンチ伯爵により、ローマ郊外の城に幽閉され虐待されていたベアトリーチェは、継母、兄、弟とともに父親の殺害を企て、家臣により撲殺されたフランチェスコの遺体は、事故に見せかけるためベランダから落とされた。
当局による捜査では拷問も行われ、ついには自供によって真相が明らかになり、教皇クレメント八世により一家に対して処刑の命が下された。父フランチェスコの人柄をよく知り、一家に同情する大勢の市民に見守られ、1599年9月11日、ベアトリーチェは継母、兄とともに公開処刑された。同時代の画家カラヴァッジオも処刑の場に居合わせ、この場面が彼の作品である「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」に影響を与えたとされている。
レーニの描いたベアトリーチェの純粋無垢な眼差しは、彼女の悲劇と運命を思わせる。この絵に感化され、パーシー・シェリー、スタンダール、アントナン・アルトーらの作家は、ベアトリーチェを繊細で勇敢なヒロインとした作品を書いた。その悲劇はこうした絵画や文学により、華やかなルネッサンス後期の暗い一面を示す逸話として語り継がれている。「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」は、1818年よりローマにあるパラッツォ・バルベリーニの国立古典絵画美術館に所蔵されている。
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