作品概要
《愛の勝利の寓意》は、画家のアーニョロ・ブロンズィーノによって制作された作品。制作年は1540年から1545年で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

ブロンズィーノはフランシス皇帝のために類稀なる奇妙で美しい絵画を描いた。ヌードのヴィーナスと彼女にキスをするキューピッド、その背後に描かれた様々な人物達は愛にまつわる寓意とされているが歴史上において様々な解釈が行われ、それによってこの作品そのものへの解釈もまた複数存在する。このエロティック且つ博識な主題を持つモチーフはフランシス皇帝の嗜好によく合っていたと言えるだろう。この作品はおそらく、指導者であるコジモ一世からフランシス皇帝へと送られたものであると考えられている。
右手に見える砂時計を手にした翼を持つ男は《時間》の寓意であると言われている。その下に描かれた悪戯な表情で薔薇の花を散らす少年の足は薔薇の棘に踏上げており、痛々しく貫かれている。この少年は薔薇の花がヴィーナスの代表的な持ち物であることから、ある解釈によっては《快楽》の寓意、また別の解釈では《愚行》の寓意であるとされている。そのすぐ後ろには、怪しげな表情を浮かべた少女の顔を持つ奇妙な生き物が描かれ、《欺瞞》または《愛欲》の寓意とされており、ヴィーナスの足元に転がる二つの面は愛と快楽の足元に潜む《偽り》を表しているされる。左手で頭を抱え叫び苦しむ老女は、《嫉妬》の寓意とされ、その上の女性は《真理》の寓意とも《忘却》の寓意とも解釈される。
ブロンズィーノは宮廷画家であり、熟達した詩人でもあった。この作品は彼の敬愛したペトラルカの影響を感じさせつつも、より官能的で詩的な様式へと確立されている。
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